徒然ブス

ブスが何かを思う

映画『ホットロード』の感想

公開を待ちに待っていた映画『ホットロード』見ました。

 以下ネタバレ多少あります。

 

私は登坂広臣のファンなので、彼目当てであったこと、

そして普段あまり映画を見ないこと、

さらにラブストーリーが苦手であることを先に書いておきます。

 

14歳の和希は母親との関係も上手くいかず、孤独を抱えていた。

そんな折、バイクに命をかける暴走族の少年春山に出会い、いつしか二人は惹かれ合うが…。

 

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というお話でございます。

 

少女マンガが苦手な私も、原作にはいたく感動しました。

主人公2人だけの世界ではないく、その周囲の友情や、家族との繋がりが繊細に描かれていて、その時抱える自分の状況や環境によって読むたび見え方が違ってくる、きっと何度も読み返せる少女マンガだなと。

 

けれど多くのマンガ原作モノ映画同様、やはり実写の2時間で詰め込むには難しい内容です。この『ホットロード』もその点に関しては成功してるとは言いにくい。

 

まあ個人的には苦手な部類の映画でした。

 

でも、それでもこの映画に胸が熱くなったのは、やっぱり主演の2人なわけで。

あまちゃん」にも大ハマリしていたし、臣くんも大好きだし、主演がこの2人ってだけでミーハーの私には十分でした。

 

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ところで、なんなんでしょうね。どうしてこうも「不良」って魅力的なんでしょう。

 

「10代という季節はなんて無力なんだろう」という少年少女の思春期に胸を締め付けられながら見ました。

あの頃、家と学校だけが世界のすべてだった頃、そのたった2箇所に居心地の悪さを感じ始めるとたちまち袋小路。鬱屈とした思いに苦しみ藻掻き喘ぐ。それを世間は思春期と呼ぶわけですが。あの苦しさって何だったんでしょうね。

 

そんな狭くて窮屈な世界から飛び出していくのが「不良」です。

家と学校だけじゃない、第三の楽園を見つけ、謳歌する彼らはなんて自由なんだろう…みたいな羨望がたしかに私の学生時代にもありました。

もちろん根暗でオタクの私は憧れるだけで実際に不良にはなれなかったんですけど。

 

あの頃私が踏み入れることができなかった楽園への一歩を和希が踏み出す、

初めて出会うカリスマ的な不良少女ヒロコ先輩のもとへ向かうタクシーのなかで、和希が見る横浜の景色は真新しく煌めいています。能年ちゃんの大きく零れそうな瞳に反射するネオンが印象的なシーンでした。

 

このあたりから、和希に移入してしまうんですよね。

私が見ることの出来なかった、第三の楽園への期待。もうね、気持ちは和希なわけです。

 

待ち合わせの場所にいたヒロコ先輩は随分と大人で、クラスメイトの「女子」とは違う「女」を感じさせます。そんなヒロコ先輩は「春山のところに行こう」と、再びタクシーに乗り込みます。

もう10代の女の子だけで大人ぶってタクシーに乗ること自体がドキドキするじゃないですか。 

 

で、春山との出会い。

ガソリンスタンドで働くつなぎを着た先輩が近づいてくる。

ブーツの足元が、しゃがんでふと顔が見える。目が合う。

もう、大人。大人の男。学校にはいない、同級生にはいない、

コロンの匂いと、するどい目線。

 

ギャー!ですよもう。

ファーストインパクトから、かっこいいの、春山"先輩"は。

同級生には感じることのできない危険な香りをまとった大人の男なわけです。

 

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ホットロード』のヒロインが能年ちゃんだと発表されたとき、相手役は誰なのかということが少し話題になりました。

多くの人と同じように、10代から20代前半の俳優をいろいろと思い浮かべていました。16歳の役ですから、単純に若い俳優がやるもんだと思うでしょう。

 

でも、登坂くん(当時26歳)だと発表されて、そこでガッカリした向きも多かったと思うんです。オッサンじゃん、みたいな。

 

実際、映画を見てもやっぱり登坂くんだけ大人すぎるだろっていうのはあるんですよ。

 

でも、和希に移入して見ているうちに、

ああ、これは和希の目を通して見る春山の姿なんだなと思ったんです。

 

見に覚えがあるはずです。学生の頃って1個2個しか年が変わらないはずの先輩が物凄く大人に見えたじゃないですか。

14歳が見る16歳ってすごく大人だと思うんですよ。

 

さらに和希には父親がいないから、

たぶん春山が初めて触れ合う大人の男性でもあり、そこには父性的なものも感じていたんじゃないかなと。

 

 

登坂くんが演じる春山はとにかく色っぽい。

大人の目をしてる。睨まれると心臓が千切れそうです。

 

原作の春山は子どもっぽかった。

それは私が神の視点で物語を追っているから、16歳の少年の姿を俯瞰で見て、彼の未熟さや無力さに切なくなったりしてたからだと思います。

 

でも実写の春山は、もう少し目線を下げて、和希の視点で見る春山です。

原作の春山の危なっかしさや少年ぽさっていうのはそのままなんですけど、アラサーの私も思わず少女に戻って頼ってすがりたくなるような、器の大きさを感じます。

 

紡木先生が公開時に登坂くんに送った手紙にこんなことが書いてあったそうです。

「あの春山くんは見た人の心の中に辛い時にも助けに来てくれることでしょう」

 

少女でなくなった多くの大人たちが、春山"先輩"に出会えるように。

大人が見ても、春山先輩に恋をするように。

そういう狙いであったのならば26歳の登坂くんが演じる意味があったんだなと思います。

 

 

あと主演の2人がマンガのコスプレになってないのもすごく良いなと思いました。

能年ちゃんはあのキャラクターですから、センシティブな役がどんぴしゃだったし、

登坂くんも日頃より不良的なかっこよさを提供するグループに所属しているわけですから無理がないんですよね。

不良のコスプレじゃなくて、彼が元々持ち合わせている不良性がそのまま春山に活きていたから、見てる人もそこで白けることはないんじゃないかなと思います。

 

春山は一般的な少女マンガの王子様のような、完璧な男の子ではないです。

彼は結局何も成し遂げられない。

暴走族の頭にのし上がりはするけれども、

そこで何もできないままあのような結末を迎えます。

 

「自分でやったその足で もう何からも 逃げられなくなりました なにからも どこへも」

 

という原作の和希の独白のように。

無力で非力な男です。

役者としての武器を何も持たず、丸腰で戦ってみせた登坂くんにはやはりぴったりの役だったと思ってしまうファン心です。

 

2人が役者として新雪のように真っ白なのもいい。

誰の足あともついてない、役者の世界に染まってない感じが、不器用で未熟な和希と春山の姿にマッチしていました。

 

まあ贔屓目なんですけど、主演2人のキャスティングの妙であったなと思います。

良い映画でした。

 

さて、クオリティとは別に、臣くんのファン、能年ちゃんのファンにとっても幸せな作品だったと思います。

パンフレットに書かれていた紡木先生の言葉がこの映画のピュアネスをさらに高めてくれたからです。

 

「お二人のファンの方々にはおつらい思いをさせてしまいましたが、受け入れてくださりほんとうにありがとうございました。」

 

紡木たくというマンガ家を知ったのはこの映画がきっかけでした。

こんな素敵な言葉を送る原作者初めて見ました。

 

能年ちゃんの説明不要のピュアネスと、役者として真っ白だった登坂くんと、心ある紡木先生。もうピュアの応酬です。ものすごくピュアな映画です。

松竹が興収30億円目標とか無茶なこと言ってて、大人の都合コノヤロウだなと思うんですが、どのような結果になろうともこの3人が持ち合わせたピュアが汚れることはないでしょう。

心のこもった映画です。

 


『ホットロード』特別映像 - YouTube

 

ところで能年ちゃんといえばやっぱり「あまちゃん」なわけですが、

ドラマの中でこんなエピソードがありました。

主人公の天野アキちゃんが女優として初主演を果たすことになる。

相手役はZOO STREET BOYSのTOSHIYA(通称:前髪クネ男/勝地涼)。

この前髪クネ男とのキスシーンが嫌で一悶着ある、というくだりがあります。

ホットロードの出演は「あまちゃん」出演より前に決まっていたので、

これクドカンさん知っててやったんじゃないの~と思いました。

チャラくて軽薄な前髪クネ男こと、ZOO STREET BOYSのTOSHIYA

どこの馬の骨とも知れないEXILE一族のひとり、三代目J Soul Brothers登坂広臣

そんなイメージだったんでしょう。

 

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前髪クネってるわあ…

 

サブカル界隈でこんな風に揶揄されるEXILEですが、

でもだからこそ、誠実に春山をやりきった登坂広臣が誇らしいじゃん!

伝説的な少女マンガ家が春山に選んだのは本物の不良性だったわけです。

サブカルがどれだけあがいても手にすることのできないそれでした。

ざまーみろサブカルめが。とか、またひねくれたことを思ったりしました。

 

 

 

ちなみに劇中、アキちゃんが所属するアイドルグループGMT5がチャートで1位を取るくだりで一瞬写ったランキングの9位はZOO SOUL BOYSの「KA-BU-KI-A-GE」でした。(ZOO STREET BOYSの兄弟ユニットなんですかね

 

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三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE / 「R.Y.U.S.E.I ...

 

さすがに偶然でしょうけど。

クドカンも持ってんなー。